「爆弾犯と殺人犯の物語/久保りこ著」感想・あらすじ!

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 2022年9月に出版されたばかりの本作。書店で見かけ、「装丁のかわいらしさ」と「タイトルの激しさ」のギャップが気になり、読んでみました!
「爆弾犯と殺人犯の物語/久保りこ著」です。

爆弾犯と殺人犯の物語 [ 久保りこ ]

 初めは短編集だと思い込んでいたので、途中の話(小学生の男の子と誘拐事件の話)から読み始めたのですが、男の子の両親が含みを持たせすぎて、これは前に何かあったな?!と思い、初めから読むことで、短編が繋がっていることに気付きました笑

 良かった点をまとめると、
・全体を通して読みやすく、また引き込まれるのストーリーなので一気に読み切れる
推理物のハラハラドキドキを味わえるとともに、ラブストーリー要素もあり、普段小説を読まない方でも、挫折することなく読めるような小説
・落ち着いた文章で、まるで雪の日の静けさのようなイメージが沸く、綺麗な小説

一方で、読み終わった今でも胸がざわざわするような、心に引っ掛かり続けるような・・・
もやもやポイントもあります!!

 では、本書の紹介と感想を記していきたいと思います。詳細なネタバレは避けますが、未読の方はネタばれ注意です。

madoca
madoca

モヤっとが大きすぎて、これを書いていると言っても過言ではない!

作り物だと分かっているけれど…でも、どこかに希望を見出したくないですか??

あらすじ

 空也が小夜子のスマホを拾ったことで、ふたりは運命的に出逢う。小夜子は学生時代の事故のせいで左目に義眼を入れていた。空也はその義眼に惹かれ彼女を愛しはじめたのだが、事故の原因がかつて自分が作った小さな爆弾であることを知る。そして小夜子もまた、人には言えない、ある秘密を抱えていた…。(第一話「爆弾犯と殺人犯の物語」)
 タイトルにもなっている、第一話「爆弾犯と殺人犯の物語」は第43回小説推理新人賞受賞作です。

主人公・空也への違和感

 主人公である空也は、高校生の頃、学校から薬品をくすねて爆弾を作りました。その爆弾が爆発した結果、現在の妻である小夜子の片目は潰れ、それから義眼を入れて生活しています。
 空也と小夜子が出会ったのは爆弾事件の後であり、空也は小夜子の話から、小夜子の義眼は自分の爆弾のせいであると知っていますが、小夜子は空也が爆弾を作った犯人であるとは知りません

僕があの日拾い上げて手の中で大切に磨きながら持ち帰ったパチンコ玉は小夜子の義眼を創り出した。そしてその義眼を僕はとても愛している。僕がこれからずっと小夜子を宝物のように大事にする。巡り巡って、これはやはりちょっとした運命だ。

「爆弾犯と殺人犯の物語/久保りこ著」第一話『爆弾犯と殺人犯の物語』より引用

 空也は、自分が犯人であると小夜子に告白することなく、現在も山小屋にて、爆弾を作り続けています。

madoca
madoca

・・・爆弾作りを辞めていないですって??

 小夜子は、空也が爆弾犯であると疑うような発言をすることもありますが、本当にそう思っているのか、冗談で言っているのかは定かではありません。そんな小夜子に対し、空也は積極的に嘘をついたりはしないが、本当のことは言わず、小夜子と結婚し、小夜子との生活を続けています。

 空也は小夜子を「愛している」「宝物のように大切にする」と言い、その通りに行動しています。しかし、自分の行いによって小夜子を傷つけたことへの反省の色を感じ取れません。
今でも爆弾を作り続けていることから、爆弾を作っていることや、自分の爆弾によって怪我を負わせてしまった人(小夜子)がいることについて、反省していないのは間違いないでしょう。

 愛する人へ、明け透けに全てを話す必要はない、と思います。
 しかし、それが犯罪行為だとしたら?その行為により、愛する人を傷つけていたとしたら?
 それを秘密にするのは、「自己保身」以上の理由があるのでしょうか。

 それは果たして相手を愛しているということなのでしょうか?

主人公の妻・小夜子の掴みどころの無さ

 本作は、主人公・空也の目線で物語が進んでいきます。空也の心の中は明らかになっている一方で、空也の妻・小夜子の胸の内は、明らかになっていません。
 本音を語らないがゆえ、小夜子について掴みどころのない印象のままストーリーが進みました。

・小夜子は爆弾犯が誰であるか知っているのか?
・小夜子は爆弾とわかっていたが、ひよを守ろうとしなかったのか?
・小夜子はなぜ不倫をしていたのか?
・小夜子は殺人犯なのか?なぜそうなったのか?

など、小夜子目線で語られていないことが沢山あります。

 状況から推測するに、小夜子は不倫相手の門田を穴に落とし、故意か偶然かは分かりませんが、命を奪っているようです。
 そこへ至るまでには、門田との長い不倫の歴史があるのですが…。

 小夜子は空也と出会い、幸せを感じているようです。これまでの門田との不倫の中ではそこまで大切にされていなかったことがうかがえます。
 もし、自分を義眼にした爆弾犯が空也であると分かったら、小夜子にとってのこの幸せは続くのでしょうか。

愛って何だろう

本作を読んだとき、思い出したのが、↓こちらの小説です。

Nのために (双葉文庫) [ 湊かなえ ]

罪の共有」というキーワードがあった「Nのために」です。
「愛」というテーマで思い出すのがこの「Nのために」なんです。

「Nのために」…相手の罪を知り、相手を思い、大切な相手には言わずに罪を共有する愛(※実は相手は罪を犯していない)

「爆弾犯と殺人犯の物語」…自分の犯した罪を大切な相手には言わず、罪を隠しながら生活を共にする愛

二つの作品を比べると、Nのためにと比べて、爆弾犯と殺人犯の物語は、

相手のためではなく自分のために罪を隠しているだけなのでは?

そしてその罪は犯罪なのでは?

それって誰に向けた「愛」なの?

…と、モヤモヤモヤ〜としてしまうのです。

 そんな物語の中にも、自分の愛する者のために罪を犯し、口をつぐんでいる人の存在もあったりで…。

madoca
madoca

これが正しい「愛」だ!とは言えないし、色々な考え方があって良いのだと思います。

そもそもこれはフィクションですし…。

読書って、自分の中の価値観とか、凝り固まった考え方を炙り出す役割をしますね。
こんなに揺さぶられるとは思わなかった…。

それだけ、色々考えるきっかけをくれる作品ということですね!

まとめ

読みやすく、雪の日の夜のように静かな雰囲気のある、素晴らしい作品でした。
良い作品だからこそ余韻が残り、心に引っかかり続ける小説でした。

ぜひ読んでみてください!そして感想を発信してください!私も考え続け、考えを整理し続けます。

モヤモヤする作品といえば、思い出すのはこちら↓↓

↑いやー、この作品は救いがないです。

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